伝統の発酵食文化は、冷蔵庫の普及と共に急速に衰退した。 冷蔵は、食材を買ってからの時間を緩やかに進め、冷凍は時間を止める事ができる。 僕は日本の郷土料理としてわずかに現存する『木桶の味噌漬け』の作り方を図書館で知って、そんな事を考える。

伝統の発酵食文化は、冷蔵庫の普及と共に急速に衰退した。 冷蔵は、食材を買ってからの時間を緩やかに進め、冷凍は時間を止める事ができる。 僕は日本の郷土料理としてわずかに現存する『木桶の味噌漬け』の作り方を図書館で知って、そんな事を考える。

2021年5月3日 オフ 投稿者: seiji
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伝統の発酵食文化は、冷蔵庫の普及と共に急速に衰退した。  冷蔵は、食材を買ってからの時間を緩やかに進め、冷凍は時間を止める事ができる。僕は日本の郷土料理としてわずかに現存する『木桶の味噌漬け』の作り方を図書館で知って、そんな事を考える。

その昔、一年どころか三年もの間、地野菜を『味噌漬け』にする風習が全国各地で、普通に存在したという。まず夏から秋にかけて収穫される地野菜は、新鮮なうちに塩もみ、水抜きされ大切に貯蔵される。  翌年二月。各家庭で一年間分の味噌を木桶に一本仕込む。

すると初年度に仕込んだ味噌を一年を通して使うのは二年後である。その二年熟成の味噌を食べ終わるさらに翌年の二月、桶底で眠っていた三年ものの味噌漬けがついに現れる。  だから三年熟成の味噌漬けは、毎年二月に食べる事のできる風物詩であり、家族のご馳走だったのだ。

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新潟のある地方では、これを『待ちかね漬け』と呼んで冬の楽しみにしていたという。  この話は、伝統の味噌漬けづくりの一例に過ぎない。  でも僕は、これと似たような風習が『日本中の故郷』で行われていた事実を知り、胸が痛いくらいの不思議な喪失感に包まれたのであった。#味噌漬け