その『山うにソース』のお料理は、小林酒造の奥に新しく開店した『pint(ポン=橋)』で10月のある期間提供されていた。
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その『山うにソース』のお料理は、小林酒造の奥に新しく開店した『pint(ポン=橋)』で10月のある期間提供されていた。
『それにしても、あの【山うにソース】の味はどう作るのだろう?』 僕はそれをアパート探しの途中、亀戸天神の太鼓橋の上でぼんやり考えていた。
隣のおじさんは、まるで海水浴に連れてきた孫を見るように池の石で甲羅干しする亀を眺めていた。
おじさんは『あんな小さな子供の亀は初めて見たね』とか『そら、足を伸ばして気持が良さそうだ』とか僕に話しかけてきた。
それから僕は、おじさんに亀戸の住み心地を聴いてみた。
おじさん曰く『手頃な酒場はあるが、あんたの言うような銭湯と喫茶店の昔風なものはないね、あんまり。』というような事を言った。
期待外れの返事に、僕はそれからまた『山うにソース』の事を考えた。
『山うに』が、さらにウニの味に近ずいている様な味のソースだった。
僕はその味に驚いて、この赤いアーチ橋のように何度も『のけぞって』しまったのだ。
周囲に居合わせた来客もそのお料理の美味しさに『押し並べて、のけぞっている』ようだった。
僕は亀戸天神の亀たちも、あの旨さに『思わずのけぞるだろうか』想像してみた。
でも一旦、甲羅から抜け出さないと『うまくのけぞれない』のは明白だった。
店の名前を『pont(橋)』としたのは、こんな想いが秘められていたのかも知れない。
(なわけ、ないない)