アルバイト生活から1カ月が過ぎ、その初月給で水谷隼カレーを家族に買って帰る
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アルバイト生活から1カ月が過ぎ、その初月給で水谷隼カレーを家族に買って帰る。
ひたすら伝統発酵食の勉強が出来るバイトなので、とてもありがたい環境だ。
将来、小林酒造の役に立つ。そう信じて誠意と愛情をモットーに働こう。
僕はコロナ禍こそ伝統の発酵食(日本酒含めた)が見直されるだろうと思い込んでいた。
でも実際にはそうなっていない。
今や飲食業界や酒業界、ひいてはお米農家が少しでも元通りに近づくよう、ひたすら願う毎日。
情け無いことに僕はこれといったアイディアも出せず、今もこうしてバイト前に『喫茶トミィ』でホットケーキを注文している。
自分の足下と状況の心許なさに泣きたい気持になる。
それが原因なのか最近、僕は猛烈に友達が欲しくなるときがある。
それは僕の過去を知らない、この新しい場所でつくる友達の事だ。
僕の過去を何も知らない友達をつくる。
もしそれが叶ったなら、そのお友達は僕の事を『ただのレトロ喫茶ホットケーキ好き』として付き合ってくれるだろう。
僕は屈託のない笑顔でホットケーキにバターを塗ったり、無邪気にハチミツを垂らして時にほくそ笑んだりするだろう。
そして僕はまるで純粋無垢な子供のように口元に小倉ホイップを付けながらホットケーキを頬張るのだ。