7月第一週末。バイトの面接先から10日目に『一緒に働ける事になりましたよ。』と明るくお返事を頂いた。
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7月第一週末。バイトの面接先から10日目に『一緒に働ける事になりましたよ。』と明るくお返事を頂いた。
面接では、僕がまともに働ける身体でない事は充分に伝えていた。
採用の是非を10日も考えさせてしまい、病人を雇うに、さぞ勇気が必要だったのだと心苦しく思った。
僕は僕が本当に使い物になるのか、何だか急に心細い気持にもなった。
初バイトの朝は、隅田公園にある牛嶋神社の『撫で牛』のお腹(胃のあたり)をずっと撫で回していた。
撫でた箇所が治癒に向かうというご利益で超有名な神社なのだ。
大きいもので200ℓ容量の胃袋中バクテリアと100ℓの唾液中の酵素を駆使し、草を発酵させる。
牛はその発酵分解物を全て栄養に変えて、めちゃくちゃに身体を巨大化させるのだ。
毎日、毎日、鉄板の上で焼かれて嫌気がさした牛が【いきなり!ステーキ】の社長と喧嘩して海に逃げ込んだという話はまだ聞いた事がない。
牛には泳ぐヒレも飛べるハネもない。(その代わり美味しいヒレ肉とハネ下肉を持っている。)
逃げる場所もない牛を僕はこうして、すがる思いで撫で回している。
僕は自分を慰撫する様に優しく、どこまでも優しく牛の胃袋を撫で回すのであった。
(変態のお伽話っぽくなって、どうもすみませんでした。)