僕はここで一度、北海道に帰ろうと決めた。 そして『その前に、宮島で穴子を食べて帰ろう。穴子うまいし。』と心に誓った。 結果、穴子との誓いは、僕を故郷とは反対方向の広島県へ向かわせたのだった。

『ヤマロク醤油　アーモンド鶴醤つけつけ』を食べながら僕は、いよいよ高松港で考えていた。札幌の病院で、おっかない検査日が迫っていたし、薬も僅かしか残っていなかった。

昨年は毎日、腹をこわして体重がメキメキ落ち、食べたものの逆流による強烈な胸焼けで寝不足を繰り返す。コロナ禍苦境に悶々としているばかりの自分が心底情けなかったし、かと言って酒造りを手伝う体力もない。

口では何とでも言えたが、その実『環境を全部変えるために逃げた。』それが本音なのかも知れない。そして、この3か月は『過去の何をも考えない。』『未来の何をも決めない。』『現状の何をも案じない。』この【三ない】を決めて過ごした。

ここ数日は小林酒造から『甑（こしき）倒し。』のご案内が届き 　実家の母からは『市販の漬け物の味が濃いのでさらに酒粕に漬けてみた』と連絡が入り 　横浜の自宅からは『毎日届く酒、味噌、醤油入り段ボールで納戸が閉まらなくなった。』と連絡が入った。

僕はここで一度、北海道に帰ろうと決めた。 　そして『その前に、宮島で穴子を食べて帰ろう。穴子うまいし。』と心に誓った。 　結果、穴子との誓いは、僕を故郷とは反対方向の広島県へ向かわせたのだった。 　ということで今、なんだかとても元気なのであった。